テレビのワイドショーでおなじみの「自衛隊」。
しかし、ニュースの中では「自衛官」と「自衛隊員」という、似ているけど違うのか同じなのかわからない2つの言葉が登場します。
あまり触れられることはありませんが、これら二つの言葉は似て非なるものなのです。
まず、「自衛隊員」とは、防衛大臣と副大臣(それぞれ文民がならなければならないと憲法で規定されています。)、防衛省の政務官を除く、「自衛隊という組織にいる人全員」のことです。
一方「自衛官」とは、自衛隊員の中でも国際法で「戦闘員」とされる人たちのことです。
ですから、事務をつかさどる事務官や教官・技官は「自衛隊員」ではありますが「自衛官」には含まれません。なので、有事の際に実際に武器を持って国民の命を守るのはこちらになります。
普段我々が目にする「自衛隊」の姿と言えば、まずは災害派遣です。
災害派遣には主に陸上自衛隊が当たります。
大規模な地震や台風などが起こった時に、主に都道府県知事の要請で出動します。
行方不明者の捜索や負傷者の救急輸送、そして入浴用の仮施設の開設や空中からの消火など、テレビでもおなじみのものが多くあります。
なお、災害派遣の際には基本的に火器の使用はしないことになっていますが、やむを得ない場合には選択肢として含まれています。
実際に、東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故では、戦車の高い放射線防護能力を買われて出動が検討されました。(のちに遠隔操作式の重機が投入されたため実際には投入されませんでした。)
地下鉄サリン事件や日本航空123便墜落事故など、警察や消防だけでは対処ができない場合に自衛隊が出動するときも災害派遣の扱いとなっているほか、離島の急患の輸送も災害派遣の扱いとなっています。
あまりなじみはありませんが、「治安出動」というものもあります。
国民の生命が危険にさらされた時に「国民の安全を守るため」に出動することを言います。
実際には大規模なテロや暴動、ゲリラなどが想定されていて、近年は訓練も行われています。
実際に安保闘争の際には治安出動が検討されましたが、結局は出動しませんでした。
今まで「治安出動」という形で自衛隊が出動したことはありません。
また、治安出動の際には武器の使用が認められています。
治安出動の場合、内閣総理大臣は出動命令から20日以内に国会を召集し付議を求めなければならないことになっています。(国会が不承認の議決をした場合や必要がなくなった場合は撤収の命令を出さなければならない、と定められています。)
近年の話題として、領空侵犯への対応があげられます。
日本の領空に侵入してきた航空機に対して警告を発したり、場合によっては撃墜したりします。(無防備な民間機に対する撃墜は禁止されています。)
また、ハイジャックの際の民間機の護衛や誘導も任務の一つです。
現在もロシアや中国、そして国籍不明機に対して年に多数のスクランブル発進が行われていて、その多さも問題となっています。
また、一部で問題視されているのが海外派遣です。
以前は専守防衛の精神に則り、海外派遣はおこなってきませんでしたが、PKO協力法成立以降は地雷撤去や掃海などで隊員が現地に派遣されることが多くなっています。
この際、「隊員が危険にさらされる」などの声も多く、海外派遣に関しては賛否両論あるようです。
規定はありませんが、不発弾の処理も任務の一つです。年に5000トン以上の不発弾を処理しています。
「自衛官」と聞くと、何となく雲の上、立場も全く違う人、というイメージを持ちがちですが、災害にあった際やもしもの有事の際には我々がお世話になる存在なのです。